♯98SILENT VOICE(18禁)番外前編

♯101 Remedy
 読者の指摘から着想した「八雲が手紙見なかった」場合を描いた番外編です
 凌辱描写を含みますのでご注意ください

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≪第7話 目次 番外後編≫
第1話から続きます

 八雲のつり目がちな目は、下がり気味の眉と、ときに過ぎるほど控えめな性格を反映した仕草に緩和され、鋭角さを感じさせることはない。普段なら。
 常の彼女を良く知る者なら、そのとき彼女が周囲に配った視線に込められた攻撃性を、いぶかしんだろう。

 八雲は、心配そうに一度我が家を振り仰いでから学校へ向かった。


 それを見届け、男は再び塚本家に向かう。

 『あー、どうする、どうしよう、今行ったらやぶへびに、いや先送りにすればするほど露見しちまう可能性が、だいたいもう通報とかされてたら、そもそも俺は何であんな、盗撮だけで満足しとけば、いや天満ちゃんがあんな男に夢中なのが……』
 小心者の見本市を垂れ流しながら、門前にたどり着いた男。
 「何かご用ですか」
 「えっ? あ、な、なに!? 『びびび、ビックリしたあ』」
 自家撞着に陥っていた男は、背後から声をかけられるまで八雲の接近に気づいていなかった。
 「あ、うっ『この子学校行ったんじゃ』」
 男を見据える八雲の面には、誰が見ても攻撃的な表情が貼りつけられている。
 対する男は、最初の驚きが去ると、選択肢を奪われて決断する必要のなくなった、小心者の安堵を浮かべる。



 塚本家近くの林道、そこは住宅街にあるにしては深い木立によって、周りから隔絶されており、他聞をはばかるにはふさわしい。

 「お、お姉さんに渡してもらった手紙の中身、知ってるのかな」
 「手紙を読んだ後、姉の様子がおかしかったので、盗み視ました」
 もちろん、「心を」とは続けない。
 どうしたのかと問う八雲に対して、激しい動揺の中にあってなお、妹に心配かけまい、彼女だけは巻き込むまい、と必死だった天満の痛々しさを思い返すと、声を荒げそうになる。
 が、その怒りから逃れるように、男は唐突に地面にひざをつき、両手のひらをつき、頭を下げて土下座する。
 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
 あれは、気の迷いというか、魔が差したというか、二度としませんから許してください」
 言いながら鞄を探った男は、シール式の封を閉じていない封筒を取り出すと、うやうやしく両手をそえ、頭を下げたまま八雲に差し出す。
 「これで、隠し撮りしたデータと、写真のプリントアウト全部です『惜しいけど、本当に全部渡すんだから信じて』。
 二度とお姉さんには近づかないから、昨日の手紙はなかったことにしてください」
 「本当に?」
 恥も外聞もなく頭を上下に振りまくると、へつらった笑いを浮かべ、憐れみを乞う上目づかいで八雲を見上げる。
 「本当に全部だし、近づきません。
 自分でお姉さんに謝るのが筋かもしれないけど、とても合わせる顔がないし、俺の顔なんか見たくもないだろうし『何より目撃者を増やしたくない。幸か不幸か天満ちゃん、俺のことなんて知らないし。あれや昨日のが残るけど、他人に見せるわけにいかないから処分するだろうし。この程度のことで警察に捕まって人生狂わされたらたまんないから、ホント、二度と関わらない』勘弁してください」
 あまりの誠意のなさは、これまで天満にしてきたこと、するつもりだったこととあわせて、腹に据えかねる。だが、その身勝手さが、男を天満から遠ざけるのなら、と憤りを飲み下して答える。
 「わかりました。私から渡しておきます」
 「えーと、天満ちゃ『うっ』」
 八雲の瞳に不快を読み取った弱者の察知能力が、呼称を変更させる。
 「……お姉さんは、君が気づいてることを知って」
 「知りません」
 「じゃ、じゃあ、封筒に謝罪の手紙も入っているから、俺が昨日の手紙はなかったことにして欲しいと、謝ってたとだけ伝えて、くだ……さい」



 言いたいことだけ言って、早々に逃げ出したストーカーの、見たくもない顔を再び見るはめになったのは、五ヶ月が過ぎた頃の、駅の人ごみの中でだった。



 八雲に気づいた男は、目をそらすとこそこそと人ごみにまぎれていく。
 その場を立ち去ろうとした彼女に、男の顔以上に見たくなかったものが、視えてしまう。
 『妹、天満ちゃんの。どうせならあの子がどっか行っちゃえば良かった、俺を置いてアメリカへ行くなんて、ひどいよ天満ちゃん。さすがに追っていけないし。あれから撮りためた画像、向こうのサイトに上げたら、居づらくなって帰ってきてくれないかな』
 頭に血が上り、男に詰め寄ろうとした八雲を、さいわいにも人の波がさえぎる。いくらか落ち着いた八雲の視線は、男の行く先を追い。


 古びた二階建ての木造アパートに行き着く。

 その一室の玄関前で、男はポケットを探っている。
 八雲は、男に気づかれないように置いていた距離を、突入に備えて縮める。
 『ここ俺の部屋じゃないんだ、残念ながら』
 「え……」
 驚愕に、立ちすくむ八雲を振り返り、満面の笑みを向けるストーカー。
 「でも、お姉さん『アメリカ行っちゃって好都合』の画像、ネットに上げる準備がしてあるのは本当だから、そのことについて、『邪魔の入らない』君んちで話そうか、じっくりと」



 数週間後、八雲が通う学校の一角にて。

 「ねえねえ、最近なんか八雲の様子、変じゃない」
 「うーん、やっぱり?
 力のこと打ち明けてくれてから、何でも抱え込んじゃう傾向、減ってきたと思ってたんだけど」
 「いやいや、いきなり何もかもは変えられないよ。
 それに、変えなくても良いことだってあると思うし」
 「おおっ、それなんのドラマのセリフ?」
 「ひっどーい、何でわたしが真面目なこと言うとちゃかすかな」
 「ごめんごめん。でも普段の行いが、ねえ」
 「考えてみたら春休みに、私が同居する話断ったときから、どこかおかしかったかもしれない」
 「あー、確かに、断り方がらしくなかった、というか。
 まあ、播磨先輩居候させるってのは、さすがに無茶だったけど。でもあの家に一人は、寂しいよ」
 「ただ一人になっちゃっただけじゃなく、居なくなった人の存在がね、あまりにも大きかったもの」
 「うん……」
 「やっぱり塚本先輩すごいよね。
 好きな人追いかけてアメリカにまで行って。しかも、その人の病気を治すためにお医者さん目指すっていうんだもの。
 尊敬しちゃう」
 「そういえば八雲言ってたよ。あなたお姉さんに似てるって」
 「うーっ、それはちょっと。私の目標、沢近先輩だし」
 「それ、無理過ぎ!」
 「ひどっ、何もハモらなくても……」
 「私、八雲の家に行ってみるよ」
 「あっ、ごめん。今日つきあえないや」
 「うん、一対一のほうが話しやすいかもしれないし。今日は一人で行くわ。
 とりあえず、メール入れて、と」


メディアファクトリー
2006-09-22


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 塚本家の茶の間。

 (……何の猪口才な! ふ、不埒な痴れ者めが……)
 「あっ、はああ、くふぅ、はあはあ、はあ……」

 睦まじい姉妹団らんの場だったそこに、ふさわしい音声── 二人とも時代劇好き── と、ふさわしからざる淫靡な声、発するはつけっ放しのテレビと、仰向けの男の上にまたがる生白き女体。

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